太融寺
2017年5月訪問
太融寺(たいゆうじ)は大阪市北区、梅田の東にある真言宗(高野山真言宗・準別格本山)の寺院です。山号は「佳木山(かぼくさん)」、院号は「宝樹院(ほうじゅいん)」。西日本一の歓楽街の中にありながらとても静かな境内には空海(弘法大師)を祀る大師堂や不動明王を祀る不動堂、さらに大坂夏の陣で自害した淀殿(淀君・茶々)の墓所もあります。
南門から見た太融寺 |
歴史
太融寺は弘仁12年(821年)に嵯峨天皇の勅願により弘法大師が創建しました。本尊は大阪市指定文化財でもある木造千手観音菩薩立像です。嵯峨天皇の皇子で嵯峨源氏の祖である河原左大臣源融(みなもとのとおる)はこの地に八町四面を画して七堂伽藍を建立したので浪花の名刹として参拝者で賑わいました。
この太融寺ゆかりの源融は紫式部が書いた「源氏物語」の主人公、光源氏の実在モデルの一人とされています。またその子孫には、この近くの港である渡辺津(わたなべのつ)に住み、渡辺氏の始祖とされる渡辺綱(わたなべのつな)がおり、こちらは鬼退治の逸話などでも有名です。
南門前にある千手観音像の説明版 |
慶長20年(元和元年・1615年)の大坂夏の陣の兵火で全焼し、その後元禄年間に本堂や南大門など25棟の諸堂を再建し「北野の太融寺」として親しまれました。
太融寺交差点の角にある石碑等 |
第二次世界大戦終盤の昭和20年(1945年)6月の大阪大空襲で再び塔堂伽藍一切が
灰燼に帰す被害を受けましたが、本尊の千手観音像は難を逃れました。戦後の復興における都市計画により、八町四方あった広大な敷地は大幅に縮小されましたが、昭和35年(1960年)に本堂の落慶法要が行われるなど、20余棟が復興しました。
境内
前述の通り、かつて広大な敷地を持っていた太融寺ですが、その名残は現在も太融寺町、堂山町、神山町など周辺の地名に見て取れます。その他、野崎町、兎我野町、扇町公園なども境内地の名称にゆかりがあるそうです。
太融寺境内案内図 |
現在は道を隔ててオフィスやホテル、その他飲食店の入ったビルなどに囲まれた中にあって厳かな雰囲気を醸し出しています。敷地には本堂、大師堂、一願堂、護摩堂、宝塔、客殿、本坊、庫裡、鐘楼、東門、西門、南門、北門、御供所など20余りが再建されています。
本堂 |
本堂には本尊の千手観音菩薩像が安置されており、新西国三十三所霊場第2番札所、おおさか十三仏霊場第8番でもあります。また、本堂西側に松尾芭蕉の句碑があります。
大師堂 |
本堂右手にあるのが大師堂です。本尊はその名の通り弘法大師で、光背に日輪を背負われており、摂津国八十八ヶ所霊場6番札所となっています。
宝塔 |
本堂の北東、大師堂の北に隣接する朱塗りの宝塔の一層に一願堂(不動堂)があります。こちらの本尊は不動明王(石仏)で、一願成就のご利益のある「一願不動」と呼ばれ、昔より霊助にあずかった実例は枚挙にいとまがないそうです。
九山八海庭 |
南門から入って右側にある仏教の世界観を表したとされる「九山八海庭」。
鐘楼と本坊 |
西門から入るとすぐ左には鐘楼があります。右側にはコンクリート造りのモダンな本坊が見えます。その壁に大きく毛利家でお馴染みの家紋「一文字三つ星」が見えます。この紋は他の建物の瓦など、沢山見かけました。
鐘楼の奥には白竜明神、淀君之墓、水子地蔵尊、ぼけ封じ観音などが。 |
また、鐘楼の奥、寺の北西には淀殿の墓や白竜明神などが集まっています。
白竜明神 |
淀君の墓は寺の北西隅にひっそりとありますが、その手前には白竜明神という白蛇を祀る祠があり、縁結びのご利益があるそうですが、こちらは女性がお参りするところで、男性がお参りする所は別にあります。それが太融寺を出て東、神山交差点の南、現在スーパーのライフ太融寺店の前の道路上にある竜王大神です。かつては竜王大神の場所も太融寺の境内だったのです。
淀殿之墓 |
淀殿(淀君・茶々)は近江の戦国武将浅井長政の娘で母は織田信長の姉のお市の方。豊臣秀吉の側室、また豊臣秀頼の母として大坂夏の陣の敗戦時に秀頼と共に自害したことで有名です。淀殿は大坂城外の鴫野郷弁天島に淀姫神社を作って祭られたようですが、明治10年(1877年)の城東練兵場(現大阪城公園)造成に当り移祀されることになり、豊臣に縁りの深い太融寺に埋め、九輪の塔(現在戦災に依り六輪)を建て境内西北隅に祀ったそうです。
ぼけ封じ観音(左)と歩兵第二百十六聯隊戦没者供養塔(右) |
アクセス
都会の真ん中なので電車が便利です。最寄は地下鉄谷町線の東梅田駅ですが、少し遠い地下鉄御堂筋線、阪神、阪急の梅田やJRの大阪駅からも徒歩10分位です。いずれも地下街で泉の広場を目指し、地上に上がると曽根崎東交差点ですので、そこから東に少し歩くと太融寺交差点で、左に大阪東急REIホテル、右側に目的のお寺があります。
大通りに面した北門。最も寺らしいのは西門ですが、正面は南門かと。 |
車で大阪駅、阪神前、阪急前から東に向かう場合は阪急前で斜め左の都島通りに入らない様直進すると、高架をくぐってすぐ太融寺交差点に出るので右折すると寺の西門です。東の扇町方面からは扇町公園の南を通って神山交差点を過ぎると太融寺交差点ですので左に曲がると西門があります。
ただし、境内の駐車スペースは僅かで、入れないことも多いようですので近隣のコインパーキングを利用することになります。
●太融寺ホームページ → http://www.taiyuji.com/index.html
コメント
コメントを投稿