西恩寺
2020年11月訪問
西恩寺(さいおんじ)は大阪府南河内郡千早赤阪村小吹にある寺院です。宗派は大阪市平野区にある大念仏寺を総本山とする融通念仏宗で、山号は亀宝山(亀寶山)。河泉地蔵霊場第四番札所でもあります。
西恩寺(南河内郡千早赤阪村) |
西恩寺は大阪府唯一の村である千早赤阪村の西部、小吹地区の集落から少し離れた山の中にあり河内長野市との境からもすぐの場所にあります。観光案内などにもあまり登場しませんが、秋には色とりどりの紅葉がとても美しい、知る人ぞ知る寺院ともいえます。
歴史と概要
西恩寺に由緒記や説明板は見当たらず正確な創建年は不祥ですが、「郷土史の研究」には、幸善を開基とし建久9年(1198年)に創建され、当時は真言宗に属する檜尾山観心寺の一坊であったとも伝えられている、と記されています。
また、29代住職の長善が融通念仏宗の僧だったため融通念仏宗に改宗して十里辻本の道場とし、少し東の東阪村から移ってきた、とする説や、34代住職西音の時に寺号免許され「亀寶山西音寺」と称したとする説(西恩という住職の代に西恩寺となったとも)、良本の代に融通念仏宗に改宗し阿弥陀三尊を本尊とし、寛文6年(1666年)に大念仏寺法燈第四十三世舜空上人より現在の寺号を賜ったとの説などもあったようです。
融通念仏宗は浄土教の宗派の一つで、平安時代末期の永久5年(1117年)に天台宗の僧侶であった聖応大師良忍により開宗されました。総本山は摂津国住吉郡平野(現大阪市平野区)の大念仏寺で、融通念仏宗は特に河内国や摂津国、大和国で隆盛をみました。
西恩寺の御本尊は阿弥陀三尊ですが、他に空海(弘法大師)作と伝わる不動明王と、かつて小吹地区にあり廃寺となった菖蒲寺の本尊であった地蔵尊も祀られているようです。
境内
西恩寺は千早赤阪村小吹地区を通る府道211号中津原寺元線に面しているので、府道から直接参道の石段が山門まで続いています。
寺院の南側に府道が走っていますが、道路に沿うように紅葉の美しい木が集中しているので毎年秋になると通行人が思わず足を止めてしまいそうな景色となります。
石段を彩る紅葉のトンネル |
石段の上り口付近には左右両側に石標が建っており、左側に「子安大地蔵尊當山安置」、右側に「融通念佛宗十里辻本西恩寺」と彫られています。この石段はタイミングが良ければ紅葉のトンネルと絨毯が楽しめます。
山門 |
石段を30mほど上ると山門があります。
境内 |
山門をくぐると右斜め前方に向けて石畳の参道が続いており、その左右にいくつかの建物、最も奥の左手に本堂が見えます。
手水舎 |
手水舎は境内に入ってすぐ左側にあります。
紅葉と鐘楼 |
手水舎の手前を少し奥に進むと左手の石垣の上に鐘楼があり、突き当りに祠が見えます。鐘楼の外側には巨大な銀杏(イチョウ)の木があり、こちらも秋には鮮やかな黄色に。
稲荷社? |
奥にある覆屋のある小さな祠は稲荷神を祀っているようです。
寺務所 |
参道から左に分かれた石畳の先には寺務所らしき建物があります。
延命子安大地蔵尊(左) |
本堂への参道を進むと右手に二棟のお堂が並んでいますが、左が延命子安大地蔵尊です。
位牌堂 |
子安地蔵尊から道を挟んで左側には、火灯窓のある少し大きな堂宇がありますが、こちらには「位牌堂」の扁額が掲げられています。
英霊殿 |
さらにその左、本堂の前には大きな覆屋を持った建物があります。
覆屋の下の社殿 |
こちらはかなり立派な神社建築のようで、西恩寺の鎮守社のようにも思えますが「英霊殿」とあることから戦没者をお祀りしているようです。ちなみに、小吹地区の旧村社としては小吹八坂神社があります。
本堂 |
参道の奥に本堂があります。御本尊は阿弥陀三尊となっています。一般的に阿弥陀三尊とは阿弥陀如来を中尊とし、その左右に左脇侍の観音菩薩と、右脇侍の勢至菩薩を配する三尊形式です。
東側の道路 |
なお、延命子安大地蔵尊の左手(東側)にも道があり外の府道とつながっています。
西恩寺は秋の紅葉が美しい寺院ですが、秋以外の季節も桜や石楠花(シャクナゲ)といった花などが楽しめるそうです。静かな山の中にありつつ比較的アクセスが良いことから今後増々注目されるかもしれません。
なお、西恩寺周辺を見ると、東に小吹八坂神社や中津神社が、西には川上神社(旧鳩原神社)といった神社があります。また、いずれも紅葉などで知られる観心寺が直線距離で1.8kmほど西北西に、延命寺が2km少々西南西にあります。
アクセス
千早赤阪村役場や道の駅ちはやあかさか、建水分神社などからほど近い府道705号富田林五條線「森屋」交差点から南に約2.7kmの「東阪」交差点を北西に坂を上って府道209号東阪三日市線に入り、約600m進んで「中津原」交差点を左折。府道211号に入り道なりに2km弱進むと右手に西恩寺があります。
駐車場とイチョウ |
河内長野方面からは国道170号(旧道)「菊水町」交差点から東に進み、国道310号に入り道なりに約4.8km進みます(観心寺前などを経由)。南海バス「鳩の原」バス停前の分岐を左の府道211号(南河内グリーンロード)に入り、1kmほど進むと左手に西恩寺があります。
駐車場は府道から山門に向かって左(西)側にあり、駐車場、拝観料ともに無料。
公共交通機関では、南海高野線・近鉄長野線「河内長野」駅から南海バスに乗車し、前述の「鳩の原」バス停で下車。府道211号(南河内グリーンロード)を徒歩約1kmです。
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