九品寺
2018年11月訪問
九品寺(くほんじ)は、奈良県御所市大字楢原にある寺院です。宗派は浄土宗で山号は戒那山(かいなさん)。本尊は阿弥陀如来となっていて、境内や裏山に「千体石仏」や 「千体地蔵尊」と呼ばれる数多くの石仏があることで知られています。九品寺(御所市) |
葛城山麓の奈良県側、田園風景が広がる長閑な地域の森林と田畑の境目辺りに所在し、すぐ北西には駒形大重神社、少し南には葛城一言主神社が鎮座しています。
歴史と概要
九品寺の正確な創建年については不祥ですが、言い伝えによると奈良時代の僧、行基によって開かれたと言われています。行基は生涯を通じ民衆救済のための布教活動を行い、同時に灌漑や港湾施設建設といった土木工事、そして僧尼院建設に心血を注いだ僧として知られています。聖武天皇の御代、東大寺の大仏造営にもかかわり、その大仏建立の功績によって日本初の大僧正となっています。現在の九品寺の所在地は御所市大字楢原という地名ですが、中世には御所城主であった楢原氏の菩提寺でした。御所市の観光ガイドによると、南北朝の戦乱期、楢原氏は南朝に味方していた楠木正成(大楠公)のため一族を引き連れて参戦しましたが、その戦いに赴く時に、一族は身代わりのために石仏を彫って九品寺に奉納したのが、今に伝える千体石仏だそうです。
その後、室町時代後期(戦国時代)の永禄年間(1588年から1570年)に、観誉弘誓(かんよぐぜい)により浄土宗に改められました。
慈母地蔵尊の周りにも多数の石仏 |
九品寺という寺院は全国にいくつかありますが、御所市観光ガイドなどによると、仏教での「九品」という意味は、「布教でいう上品・中品・下品で、人間の品格をあらわしています。上品の中にも上中下があって中品や下品にもそれぞれ上中下があります。全部で九つの品があるので九品と名づけられています。」とのことです。
特に浄土教では同じ極楽浄土へ往生するにも、9つのパターンがあるとされていて、俗にいわれる「上品(じょうひん)」や「下品(げひん)」の語源との説もあります。
境内
葛城山系東側の麓に沿って御所市内を南北に走る山麓線(奈良県道30号)沿いには多くの神社仏閣がありますが、こちら九品寺も参拝するには通常山麓線からになります。スロープのある山門 |
山麓線から山に向かって100mほど入ると、前方少し右手に九品寺の山門が見えて来ますが、この山門前を南北に通っている細い道が葛城古道(葛城の道)です。
青空と紅葉の下の参道 |
山門をくぐると正面に本堂などが見えますが、参道から左(南側)に行くと「十徳園」という庭園があります。
白壁 |
庭園入口から少し進むと右手に長い白壁が続いていますが、この向こうは霊園となっています。
手水鉢 |
本堂手前の右手には、なみなみと水を湛える手水鉢があり、そばには小川も流れていました。
本堂 |
手水鉢から少し参道を進むと正面に本堂があります。こちらには本尊の木造阿弥陀如来坐像が安置されていまが、これは平安時代後期の作とされ国指定重要文化財に指定されています。
本堂の手前左側には行基上人の像も。
地蔵堂 |
本堂に向かって右手にあるのが地蔵堂です。
寺務所と十三重石塔 |
本堂の左側には細長い建物(寺務所)があり、手前には十三重石塔が建っています。
鐘楼と十三重石塔 |
寺務所の左手、本堂参拝後なら左を振り返ると立派な屋根の鐘楼が見えます。こちらの梵鐘には慶長15年(1610年)の銘が刻まれているそうです。
千体石仏への道 |
千体石仏の並ぶ本堂の裏山には、本堂と地蔵堂の間の小道から行くことができます。
本堂右手の道 |
本堂の右側を通り抜けて裏山へと向かいます。
本堂裏の坂道 |
本堂裏手の坂道を上って行きますが、その途中にも多数の石仏があります。
裏山からの景色 |
坂の途中で振り返ると視界が開けていて、特に橿原などの市街地や大和三山といった奈良盆地の南の方がよく見えることに気付きます。
納骨堂 |
納骨堂の辺りまで来ると平らな場所が所々あり石段で結ばれています。
「千躰地蔵尊」 |
裏山の道沿いを中心にあちこちに石仏がありますが、圧巻なのがこちらのピラミッド状の階段に並べられた千体石仏(千体地蔵尊)です。
これらの石仏は、200年ほど前に境内の土中から掘り出されたもので、その数は1600~1700体にのぼるとか。その後これらの石仏は現在の様に並べられたそうです。
前述の様に、南北朝時代にこの地を治めた南朝方の楢原氏が、兵士の身代わりに奉納したものとされ、「身代わり千体地蔵」などと呼ばれています。
九品寺は大きさだけでなく、一体一体異なった表情や形の石仏を間近に、多数見ることができる貴重な寺院といえます。
至る所に石仏や石塔が |
九品寺の裏山は千体石仏で有名ですが、秋には紅葉も楽しめます。
秋は紅葉も美しい |
訪問時は、境内とその裏山の紅葉、周辺の田んぼの彼岸花(曼殊沙華)なども含めた秋の景色を堪能できました。
西国三十三所巡り |
裏山を回って坂を下り、本堂前から山門の方へと戻ります。山門を出る手前の参道脇には西国三十三所各霊場の観音像が再現・安置されており、西国三十三所巡りを体験できます。
池泉回遊式庭園「十徳園」 |
また、参拝前に通り過ぎた参道南側の「十徳園」は池泉回遊式庭園で、古庭園研究の権威、森薀(もりおさむ)博士の設計だそうです。
●御所市観光ガイド 九品寺 →https://www.city.gose.nara.jp/kankou/0000001416.html
アクセス
九品寺の入口は県道30号御所香芝線(山麓線)沿いにあります。その入口へは、近鉄御所線「近鉄御所」駅、またはJR和歌山線「御所」駅で下車。「近鉄御所」駅前ロータリーのバス停から御所市のコミュニティバス「ひまわり号」西コースに乗り「楢原」バス停で下車すると入口の前です。駐車場にも石仏(右) |
車で行く場合、南阪奈道路の「葛城」インターチェンジから山麓線を南に約5.2km。国道309号と山麓線が交わる「名柄」交差点からは北に約1.2kmで九品寺入口となっており、奈良県内からだけではなく大阪・南河内からもアクセスしやすくなっています。
県道の入口からは、山(西)の方向に150mほど進むと山門や駐車場があります。駐車場・拝観料ともに無料。
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