薬師寺(奈良市) ・飛鳥から移ってきた壮大な伽藍の寺院

世界遺産 薬師寺

2016年3月訪問
薬師寺(やくしじ)は奈良県奈良市西ノ京町にある寺院で、南都七大寺のひとつです。興福寺とともに奈良時代に平城京を中心に栄えた南都六宗の一つ法相宗(ほっそうしゅう)の大本山で、山号は無し。本尊はその名の通り薬師如来です。

薬師寺(奈良市)
薬師寺の伽藍

奈良の寺院といえばまだ仏教が日本に伝来した頃の雰囲気もあって京都などとはまた違った趣がありますが、この薬師寺もまた奈良時代に朝廷の保護を受けた大変大きなお寺でした。数百メートル北の唐招提寺とともに大変古く見所の多いお寺です。



※ 平成21年から平成32年の予定で国宝である東塔の解体修理が行われており拝観出来ないエリアもあります。



歴史

もともと薬師寺は飛鳥の藤原京(現在の奈良県橿原市城殿町)に造営されました。天武天皇9年(680年)、天武天皇は后である鵜野讃良(うののさらら・後の持統天皇)皇后の病気平癒を祈願して薬師寺建立を発願し百僧を得度(出家)させたと日本書紀にあります。しかし天武天皇は寺の完成を見ることなく朱鳥元年(686年)に崩御されました。

あとを継いだ持統天皇により伽藍の一部(金堂)が整ったのが持統天皇2年(688年)頃と
され、日本書紀にもこの年の1月8日に無遮大会(むしゃだいえ・かぎりなきおがみ)が薬師寺で行われたとあります。

その後、文武天皇2年(698年)にほぼ完成したとされる薬師寺ですが、造営自体は8世紀まで続いていたようです。和銅3年(710年)の平城京遷都に伴い養老2年(718年)に薬師寺も西ノ京に移されましたが、飛鳥の薬師寺跡は本薬師寺(もとやくしじ・元薬師寺)と呼ばれ11世紀初頭までは存続していたようです。以前は本薬師寺の伽藍を平城京に移築したものと考えられていましたが、現在の研究では伽藍も本尊も本薬師寺からそのまま移されたものではないとする説が有力です。

薬師寺(奈良市) 金堂
金堂を見上げたところ

平安時代以降は天禄4年(973年)の火災と享禄元年(1528年)の筒井順興の兵火によって多くの建物を失い、奈良時代の創建時の姿を留めるのは東塔だけとなりました。金堂や講堂は江戸時代に仮再建された後、昭和に入り西塔、中門などとともに再建されました。

薬師寺式伽藍配置

中央に金堂、その手前に中門、金堂と中門の間東西に塔、更に中門の左右から伸びた回廊が金堂の後背に位置する講堂の左右へと繋がり金堂と東西の塔を取り囲む独特のスタイルは「薬師寺式伽藍配置」と呼ばれ、大阪府下では藤井寺市の葛井寺もかつてはこの伽藍配置だったと考えられています。

薬師寺(奈良市) 南門
駐車場からは休ヶ岡八幡を抜けてこの南門へ。

この伽藍配置は本薬師寺から受け継がれましたが、中門の規模は拡大され、回廊の幅も拡げられました。

薬師寺(奈良市) 中門
中門

薬師寺(奈良市) 金堂
金堂

薬師寺(奈良市) 大講堂
大講堂

薬師寺(奈良市) 大講堂
大講堂

第二次大戦後、薬師寺再生に生涯をささげた高田好胤管主が中心となって写経勧進による白鳳伽藍復興事業が進められ、西塔、中門、大講堂などが次々と再建されました。

国宝と重要文化財

伽藍とともに見逃せないのが多数の文化財です。金堂に安置されている当寺の本尊、銅造薬師如来及両脇侍像(薬師三尊像)と東院堂の銅造観音菩薩立像(聖観音立像)はいずれも飛鳥時代後期から奈良時代(7から8世紀)の作と言われ国宝に指定されています。

薬師寺(奈良市)
回廊と解体修理中の東塔
その他にも前述の創建当時から残る東塔をはじめ東院堂など計9点が国宝に、また、南門や多数の像などが重要文化財に指定されています。

薬師寺(奈良市)
彫刻家中村晋也氏による釈迦八相像のある西塔

また、伽藍北東には聚宝館や大宝蔵殿があり、展示企画を行っていることもあるようです。

玄奘三蔵院伽藍と休ヶ岡八幡宮

平成3年(1991年)、上記の薬師寺伽藍(白鳳伽藍)から道を挟んだ北側に玄奘三蔵伽藍が建立されました。こちらには平山郁夫画伯が30年をかけて製作した縦2.2m、横49mにもなる「大唐西域壁画」があります。

また、南門を出た南には寛平年間(889年~898年)に現在の大分県宇佐から勧請された休ヶ岡八幡宮があり薬師寺を守護しています。こちらの神体である八幡三神像も国宝です。

アクセス

鉄道では近鉄橿原線「西ノ京」駅下車すぐ。東改札口を出て東(踏み切りと逆・左)へ進むとすぐに交差点があり、左に行くと唐招提寺、右に薬師寺の興楽門があります。曲がらずもう少し行くと右に薬師寺北入口、左に玄奘三蔵院・お写経道場入口があります。
 
車の場合、大阪市内方面からは阪奈道を奈良公園方面へ向かい近鉄線の線路を跨ぎ、「二条大路南5丁目」、または「三条大路5丁目」交差点を右折、奈良市内方面からは同交差点を左折して県道9号線を南下し、「唐招提寺入口」交差点などを越えて西の京病院前の信号を右折すると約300mで薬師寺駐車場(有料)が見えてきます。

西名阪道郡山インターなど南方面からは国道24号線を北上し杏町交差点を左折、佐保川を渡り次の奈良口交差点を右に折れてしばらく進み、西の京病院メディカルプラザ前の信号を左折すると300m程で薬師寺の駐車場があります。

カーナビの設定によっては薬師寺南門前の細い道路に案内されるケースがあるようですのでご注意ください(県道9号線からは信号のある交差点で曲がってください)。

 Yakushiji Temple(Nara City,Nara Prefecture)


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