熱田神社
2018年2月訪問
熱田神社(あつたじんじゃ)は大阪府松原市別所にある神社です。松原市周辺の神社といえば、近年初詣の「開運松原六社参り」で参拝される神社が特に話題になっていますが、こちらの熱田神社も、大阪では珍しい御祭神を祀り、隠れキリシタンの痕跡も窺える興味深い神社といえます。熱田神社(松原市) |
現在当社のすぐ北側には府道187号大堀堺線が、さらに数百メートル北には阪神高速14号松原線や大和川が東西に延びています。神社周辺は静かな住宅地で、田んぼや溜池も多い地域にあって、御神木の大楠をはじめとした木々が目を引きます。
歴史と概要
熱田神社の正確な創建年は不明ですが、主祭神はその社名から連想される愛知県名古屋市にある熱田神宮に関連する日本武尊(やまとたけるのみこと)となっています。境内には熱田神社の由緒を刻んだ石碑がありますが、そこにはこの宮は、日本武尊をまつる。日本武尊は景行天皇の皇子、もと小碓命という。
御父の命により九州の熊襲をうち、熊曽建は死にのぞみ倭建の御子の名をおくる。
これより日本武尊と名のる。再び東国の蝦夷を討つ。その途伊勢神宮に詣で叔母倭姫命より、神剣を授けられ国々の悪神を討つ。
帰途伊吹山の神と戦って病を得、伊勢の熊煩野でみまかる。その霊は白鳥となり飛んで河内の志紀にとどまる。
よって御陵を白鳥の御陵という。神剣は草薙剣といい、今は愛知県の熱田神宮にまつる。
昭和四十七年十月吉日
とほぼ日本武尊の略歴が記されているのみでした。
日本武尊とその陵墓については白鳥陵古墳の記事で触れていますが、松原市のホームページによると日本武尊を主祭神とするのは大阪府内には僅か4社のみということと、鎮座地である別所村に住む僧侶が尾張国の熱田神宮に詣でて日本武尊を祭神として勧請したという伝承があることがわかりました。
熱田神社由緒の石碑 |
明治時代頃の地図を見ると、熱田神社は旧別所村集落の北西角(字西山)に鎮座していることがわかります。神社のすぐ南東には鳳凰山頓随寺という真宗大谷派の寺院があり、西約800mには屯倉神社のある旧三宅村、東約700mには大堀八幡神社のある旧大堀村の集落があります。
祈祷などの依頼は柴籬神社へ |
なお、当社は神職不在神社のため同市内の柴籬神社が管理しています。
境内
拝殿や鳥居など、全体的に南南西に向いており、敷地は幅約30m、奥行き100m弱でそれほど広くありませんが、大きな木が何本かあり鎮守の杜の雰囲気がよく出ています。鳥居の額 |
府道187号から少し南に入ると左手に玉垣が並び、石造りの鳥居と熱田神社の社名票があります。
参道奥の拝殿(右は参集所?) |
鳥居をくぐるとまず百度石があり、石畳の参道の先に拝殿が見えます。
神馬と玉垣建立記念碑 |
参道から右手には神馬と玉垣建立記念碑が道路に向く形で立っています。
手水舎 |
参道を歩き始めてすぐ右側に手水舎があります。
拝殿 |
さらに進むと程なく拝殿です。当社はこの拝殿の後ろに幣殿、そして覆いのある本殿が建っています。本殿は一間社流造で江戸時代後期に建てられたとも。
拝殿に掲げられた「熱田大明神」の額 |
拝殿の「熱田大明神」の額は元禄16年(1703年)に奉納されたものだそうです。この他にも境内には江戸時代に奉納された鳥居や灯籠、狛犬などが多数残っています。
倭建命伝説の一場面を描いた絵馬 |
拝殿の右側屋外の壁には、倭建命(日本武尊)の后である弟橘比売(おとたちばなひめ)が自ら身代わりになって入水し荒波を鎮めたことを思い出し、東国を望み「吾妻(あづま)はや...」と嘆いたという古事記の場面を描いた大きな絵馬が飾られていました(この故事から「東」を「あづま」と読むようになったとも)。
力石 |
また、鳥居をくぐってすぐ左側には少し埋まっている「力石」と彫られた丸い石がありますが、これは昔の人々が力比べをするときに持ち上げて競っていたそうです。
キリシタン灯籠 |
さらに、力石の奥(神社南西角)には江戸時代中期に造られたといわれる「キリシタン灯籠」があります。
灯籠下部に十字形石とマリア像彫刻 |
これは、キリスト教が禁止されていた時代の隠れキリシタンの礼拝物とされていて、基礎の上のいわゆる竿の部分に彫られているのは仏像ではなくマリア像だそうで、さらにその上、火袋の下の石は、正面からよく見ると十字の形になっています。
金毘羅大権現の鳥居 |
参道左側、キリシタン灯籠の右隣りには境内社の金毘羅大権現が鎮座しています。
金毘羅大権現 |
金毘羅大権現には石の鳥居と2対の狛犬があります。
龍神大神(左)と稲荷大明神(右) |
さらにその右手(拝殿より)には龍神大神、稲荷大明神を祀る境内社が並んでいます。
拝殿右手(東側)の御神木など |
一方、先ほどの大きな絵馬のあった拝殿右手には木々の茂るちょっとした広場があり、樹齢400年ともいわれる御神木の大楠の見事な姿を見ることが出来ます。
本殿裏手の不動尊と庚申尊 |
大楠の広場を抜けて本殿の裏手に出ると、神社北端の左手に不動尊、右手に庚申尊があります。
別所公民館前広場から見た東(北)の鳥居と御神木 |
不動尊、庚申尊に向かって右側には鳥居があり、神社の裏手にあたる東(北)の出入口となっていて隣の別所公民館前の広場に出ます(こちらに地蔵尊もあり)。
アクセス
鉄道での最寄り駅は近鉄南大阪線「河内松原」駅です。徒歩なら下車後、駅西側の道(松原駅前商店街)を北へ道なりに約1.5km(「阿保5丁目」交差点通過)進み、屯倉神社の角を右折。さらに800mほど進み「松原高校前」交差点を越え、約30m先を斜め右に入るとすぐ左手に神社が見えます。バスでは河内天美駅から近鉄バスの大堀線に乗り「別所西口」バス停下車すぐ...でしたが、平成29年(2017年)4月1日に路線廃止になったので、松原市営の無料コミュニティバス「ぐるりん号」に乗り「別所公民館」バス停で下車するとすぐ南の公民館から熱田神社に入れます。「ぐるりん号」は松原市役所を中心に様々なコースがあるのでホームページでご確認ください。
●松原市内公共施設循環バスぐるりん号 →https://www.city.matsubara.lg.jp/kurashi/machidukuri/3/5751.html
府道187号大堀堺線から神社正面への分岐 |
車で行く場合は国道309号線の「三宅新道」交差点を、大阪市内、大和川方面(北)からなら左折、富田林や松原方面(南)からだと右折し、府道187号大堀堺線を東へ約1.2km、「松原高校前」交差点のすぐ先で右に入る道が見える(上の写真)のでそちらへ。約50m先左手に神社がありますが、専用駐車場は無さそうなので近くでコインパーキングなどを探さないといけないようです。
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