花好山地蔵尊
2021年4月訪問
花好山地蔵尊(はなそげやまじぞうそん)は大阪府富田林市錦織北にある地蔵尊です。富田林市の錦織といえば、日光東照宮の拝殿にも影響を与えたといわれる本殿を持つ錦織神社があることで知られていますが、花好山地蔵尊はその錦織神社から1km少々南西にあり、そばには南河内の大動脈である国道170号(外環状線)が通っています。
花好山地蔵尊(富田林市) |
日本において地蔵菩薩は道祖神や「子供の守り神」として信仰され、昔から寺院だけでなく村々や街道沿いなどでもよく祀られていました。花好山地蔵尊は少し変わった名前ですが、地蔵尊は庶民に身近だったためかユニークな名前で呼ばれる地蔵尊も多いようです。また、興味深い由緒の地蔵尊として南河内では太子町の泥掛け地蔵尊などが知られています。
歴史と概要
花好山地蔵尊が建立された正確な時期は不明です。現地に掲示された花好山地蔵尊保存会による平成15年(2003年)12月の「お知らせ」によると、花好山地蔵尊は子授・安産・病気平癒・家内安全の願い事を叶えていただけると古くから言い伝えられていたそうですが、一時的に祀ることが出来ない時期があったそうです。しかし、昭和58年(1983年)頃から毎年8月に地蔵盆が盛大に執り行われるようになりました。
平成15年当時で築50年ほど経った建物は屋根の雨漏りが酷く天井や床などが腐って危険な情況となっており、その年の地蔵盆の日に、この霊験あらたかな地蔵尊を後世に残すために建物を改修する話が持ち上がりました。そして、長年に渡り寄せられた参拝者の浄財を基金とし、多くの方々の賛同を得て改修されることとなりました。同時に地蔵尊の小堂も新築され、夜間照明が付き提灯も飾り付けられ夜でも参拝できるようになりました。
改修の「お知らせ」 |
花好山地蔵尊は「はなそげ」という少し変わった名前が付いていますが、その由来は地元の民話で伝えられているようで、「富田林 旧街道でごりやくめぐり」によると、花好山地蔵尊はかつての河内国錦部郡錦郡村の北西部に位置していますが、地蔵尊の南東にある錦郡村や彼方村の人々は地蔵尊の北西にある廿山墓地に墓参りするものの、途中にあるこの地蔵尊に花を供える人がいなかったそうです。そのため「花そげ(供花しないの意味だそうです)」地蔵と呼ばれるようになったと伝えられているとか。
後に「はなそげ」に「はなすき」の漢字を当てたということでしょうか。現在は様々な御利益のある「お地蔵様」として地元の人々に信仰されています。ちなみに、廿山墓地は廿山村だけでなく錦部郡七郷の惣墓だったようです。
現在同地には地蔵尊のお堂と稲荷社などがありますが、明治時代の地図では寺院のマークつけられています。
現地の様子
花好山地蔵尊は国道170号(外環状線)から40mほど東にありますが、参道の入口は地蔵尊から約30m東の府道202号森屋狭山線側にあるようです。
府道からの |
府道の喫茶店の北側の道には比較的新しい「花好山地蔵尊」と刻まれた石標があるのでここからが参道といえます。
宝篋印塔と右奥の地蔵堂 |
参道を進むと、ほどなく左手に東に向いて建つ地蔵尊があります。その道路側には宝篋印塔がある他、建物の背後に接して建てられている地蔵堂も見ることが出来ます。なお、そのまま参道を進むと外環状線に出ます。
綺麗に管理されたお堂 |
地蔵堂前のお堂なども綺麗に整備されているようでしたが、こちらは地元の保存会によって管理されていると思われます。
百度石 |
地蔵尊前を奥(南側)に進むと百度石があり、そのさらに先に小祠と石像物のようなものが見えます。
石碑 |
奥に進むと地蔵尊の左隣には石碑?があります。高い方には「天公聿領機大王(?)」、「天公七開明神(?)」、「天公高倉秘門明神(?)」などと彫られているようで、低い方には「天空葛大明神」とあります。
稲荷神社 |
さらに奥の南側に進むと突き当たりに一間社流造銅板葺きの稲荷社が鎮座しています。村の地蔵尊と共にある小社の社殿としてはなかなか立派な造りのようですが、訪問時は台風か何かの影響なのか土台から大きくずれて傾いている状態でした。手前の施主を彫った石は「主施 阪大」となっていたのでそれなりに歴史のある稲荷社のようでした。
花好山地蔵尊がある同じ旧錦郡村の村域内には、南西に村社若宮神社跡が、南に柿本人麻呂や楠木正成の伝説が残る矢疵観音(やしかんのん)と呼ばれる聖音寺などがあります。また、約300m北西には廿山古墳、前の府道を2kmほど東に進むと彼方春日神社や弘法大師ゆかりの滝谷不動尊(瀧谷不動明王寺)があります。
アクセス
国道170号(外環状線)「廿山南」交差点から府道202号を南に入り100mほど進むと右手に「花好山地蔵尊」と彫られた石標の建つ参道入り口があります。
外環状線側から見た花好山地蔵尊 |
近鉄長野線「滝谷不動」駅からは南側の府道202号を右折して北西に向かい、道なりに約850m進むと左手に花好山地蔵尊の石標があります。
いずれのコースでも喫茶店「カフェ・ド・キャビン」さんを目印とし、横の参道に入り30mほど歩くと地蔵尊があります。外環状線から参道に入ることも可能ですが、参拝者用駐車場は無いようです。
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