黒田神社
2017年11月訪問
黒田神社(くろだじんじゃ)は大阪府藤井寺市北條町にある神社です。平安時代の書物「延喜式神名帳(えんぎしきじんみょうちょう)」に河内国志紀郡14座のうちの一つとして名前のある、いわゆる式内社と呼ばれる由緒ある神社でです。黒田神社(藤井寺市) |
奈良県から流れてきた大和川が、河内平野を北上してきた石川と合流する地点から少し下った南岸に鎮座し、静かな住宅街の中にありながらも多くの木々に囲まれ、立派な社殿を持つ神社です。
歴史と概要
黒田神社の正確な創建年は不明ですが、境内にある石碑に彫られた御由緒によると、初代神武天皇の皇子である神八井耳命(かんやいみみのみこと)の隠し廟所といわれ、第16代仁徳天皇の時代に瑞垣を建立し祭祀されたのが始まりとされています。現在、神八井耳命の墓所は不明ですが、日本書紀では奈良県の「畝傍山北」に葬られたとされ、その地に鎮座する八幡神社には同社が神八井耳命の墓の所在地であるという言い伝えもあり、かつては「八井神社」と呼ばれていたそうです。
神八井耳命に関しては、黒田神社から200mほど南にある志貴県主神社(しきあがたぬしじんじゃ)で主祭神として祀られていることからも、この周辺との関わりを窺わせます。
式内黒田神社御縁起の石碑 |
現在の御祭神である天御中主大神(あめのみなかぬしのかみ)は、第48代称徳天皇(しょうとくてんのう=重祚前は孝謙天皇)の神護景雲2年(768年)に祭祀されたそうです。天御中主神とは、日本神話の天地開闢において登場する神です。古事記では混沌の中から生まれた造化三神の一柱で、その名は天の真中を領する神を意味します。天御中主大神を祀る神社は珍しいようですが、南河内では千早赤阪村の建水分神社でも祀られています。
本社には他に天照皇大神、そして武甕槌神、経津主神、天児屋根命、比咩大神の四神(藤原氏(中臣氏)の守護神=春日神)も祀られています。これらは明治40年(1907年)の神社統廃合により、近隣の7社が合祀されたためですが、この内、式内社である志疑神社(藤井寺市大井)は昭和21年(1946年)に、大山咋神社(同市船橋町)は昭和31年(1956年)に復社しています。
他に4つの境内末社があります。
また、菅原道真公を祀ったことから、中世の頃より「北条天神」と称した他、「北条天王」とも呼ばれました。さらに、江戸時代の書物「神名帳考証」には稲霊を祭るとあります。
本殿の屋根 |
現在の藤井寺市北条地区、林地区、柏原市の柏原地区(旧柏原村市村新田)の産土神であり、明治5年(1872年)村社に列格。昭和44年(1969年)10月には、柏原市今町の塩殿神社に、同市上市の春日神社とともに御分霊を合祀して当社の分社「柏原黒田神社」としました。
江戸時代の宝永元年(1704年)に大和川が現在の流路に付け替えられるまで、当社は今の大和川の北側に鎮座し、柏原市の中心部までを氏地とする大きな神社だったそうで、現在、黒田神社は神職不在神社で、前出の柏原黒田神社が管理しています。
なお、この付近には、黒田神社以外に前出の志貴県主神社や志疑神社、さらに伴林氏神社と式内社が多数あります。
境内
大和川の南、約300mの距離に鎮座する黒田神社は、国道170号(旧道)から70mほどしか離れていませんが周辺は静かな住宅地です。境内は東西約100m、南北50~60mと細長くなっていて、北東に注連柱のある入口があります。入口の注連柱 |
注連柱をくぐり、南向きに神社に入ると、左側は公園で右側が神社になっています。10m少々進むと正面に「式内 黒田神社」の社名標が見えます。ここで参道は右に直角に折れ、石造りの鳥居の向こうに拝殿を見ることが出来ます。
社名標と鳥居 |
鳥居をくぐり、木々の間の石畳の参道を進みます。
参道 |
黒田神社の境内で特徴的な森ですが、住宅地の多い藤寺市内では古墳を除くと1,2を争う広さと思われます。由緒記によると、かつての境内地は現在の倍ほどの5000坪以上あったようで、古い地図や航空写真を見ると東側の公園(北條馬場児童公園)からさらに東に境内地が延びていたように見えます。当社は梅の名所として「河内鑑名所記」に俳句が残されています。
手水舎 |
手水舎は参道中ほど左手にあります。
柵で囲われた石灯籠と百度石 |
参道の左右には神職不在神社にしては大きめの建物があります。
拝殿 |
拝殿は入母屋造りの立派な造りで、東向きに建っています。
賽銭箱 |
この奥に弊殿と本殿があります。
市指定文化財石燈籠拓本 |
境内には南北朝時代の建徳3年(1372年)に寄進された大変古い石燈籠が1基があります。
奉納された酒樽 |
黒田神社の名の由来は、「耕している田畑が黒々と肥えてほしい」との農民の願いから付けられたとも言い伝えられています。
本殿と幣殿 |
当社の拝殿から奥の弊殿と本殿は壁や玉垣で囲われていて見えませんが、本殿を囲むように参道がつながり、その四隅に末社が鎮座する配置となっています。
大鶴大明神 |
北東隅には八幡大神(品陀別尊)を祀る大鶴大明神(八幡神社)。
天押雲根神社 |
北西隅には天児屋根尊の子である天押雲根之神(あめのおしくもねのかみ)を祀る天押雲根神社。
稲荷神社 |
南西隅には宇迦之魂神を祀る稲荷神社。
恵比須神社 |
南東隅には恵美須大神を祀る恵比須神社。
祭礼
祭礼日は7月17日、10月9日となっています。境内に地車(だんじり)小屋あり。アクセス
近鉄南大阪線「土師ノ里」駅前の「土師の里」交差点から国道170号(旧道)を北(大和川方面)へ約750m進み、信号手前の藤井寺北条郵便局のある角を右折します。あとは170mほど進むと神社入口があります。柏原方面からは、国道170号(旧道)で大和川を渡り、「河内橋南詰」からさらに南へ約300m進むと左手に藤井寺北条郵便局があるのでその角を左折。その先約170mで神社入口です。
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