道明寺天満宮
2019年2月訪問
道明寺天満宮(どうみょうじてんまんぐう)は、大阪府藤井寺市道明寺にある神社です。学問の神様、菅原道真(菅公)を祀る天満宮(天神様)は南河内にも多くありますが、道明寺天満宮はその中でも最大規模で、菅原道真と直接的な係わりを持つことでも全国的に有名な神社です。道明寺天満宮(藤井寺市) |
天満宮ということで学業成就の祈願に参拝する人が多いのはもちろん、同じく天満宮でお馴染みの梅でも有名で、こちらの梅園は大阪府下でも指折りの梅の名所となっている他、本格的な神前結婚式を挙げられる神社でもあります。
歴史と概要
当社が菅原道真を祀る道明寺天満宮となる以前から、この地には土師神社(はじじんじゃ)があったとされています。神門前の説明板 |
社伝によると、垂仁天皇32年(西暦3年)に野見宿禰(のみのすくね)は、埴輪を作って死者とともに埋葬することで殉死の風習を変えた功績により、土師臣(はじのおみ)の姓(かばね)とこの地を与えられました。その子孫は土師氏を名のり、野見宿禰の遠祖である天穂日命(あめのほひのみこと)を祀る土師神社を創建しました。
仏教伝来後の推古天皇2年(594年)には、聖徳太子の発願により土師八島がその邸宅を寄進して土師寺を土師神社の南側に建立しました。これは土師氏の氏寺であり、後に土師神社の神宮寺(神社に付属する寺院)となりました。
由緒書 |
やがて土師氏からは菅原氏や大江氏が分流し、菅原氏の中から道真が出ることとなります。承和12年(845年)に生まれた道真は忠臣として名高い学者・政治家で順調に出世し右大臣となりますが、左大臣である藤原時平に讒訴(ざんそ)され、昌泰4年/延喜元年(901年)、現在の福岡県にある大宰府へ大宰員外帥として左遷されることとなりました。
その頃、土師寺には菅原道真のおばに当たる覚寿尼が住んでいたことから、道真は大宰府に左遷される途中、当地に立ち寄ったとされます。道真は以前から度々この地を訪れていて、この地を「故郷」と詠んだ詩もあるほどです。覚寿尼との別れを惜しんだ道真は、愛用の品と伝える硯や鏡などを遺し、これらは今も神宝として伝わっています。
天暦元年(947年)には道真が自ら彫ったとされる十一面観音像を土師寺に祀り、名を道明寺(真言宗御室派の尼寺)と改めました。この名は道真の号である「道明」に由来し、土師神社内には道真を祀る天満宮も創建されました。
やがて時代が下ると、道真ゆかりの道明寺は学問の神として信仰を集めるようになり、土師神社も天満宮が中心となっていきました。
境内案内図 |
天正3年(1575年)、織田信長が当地より2kmほど南にある古市高屋城を攻めた際に社殿、五重塔などを焼失しましたが御神像や宝物は難を逃れました。同年中には信長から、さらに天正11年(1583年)と文禄3年(1594年)には豊臣秀吉から寄進を受けた他、江戸幕府からも代々寄進がありました。
寛永10年(1633年)には石川が氾濫し、当社南側にあった道明寺が北丘の上の天満宮境内に移転。その後両者は一体化してゆくこととなりますが、明治5年(1872年)に神仏分離することとなり、道明寺五坊の内、二之室が神職家となりました。6月に天満宮は土師神社に改称し、翌年9月には道明寺は分離して道を隔てた西隣の地に移転しました。
そして昭和27年(1952年)に土師神社は道明寺天満宮と改称しました。なお、明治時代の旧社格は郷社。
現在の御祭神は菅原道真公、天穂日命、覚寿尼公となっています。
また、土師ノ里駅近くにある土師ノ里八幡神社や同市内北東部にある大山咋神社の管理も道明寺天満宮が行っています。
祭礼など
道明寺天満宮には様々な年中行事がありますが、特徴的なものに1月25日の「うそかえ祭」があります。これは、菅原道真が大宰府に到着した神事の際、無数の蜂に襲われましたが、この時、一群のうそ鳥が飛来して蜂を食べて人々を救ったという故事にちなみ、参拝者たちが授与された木彫りの「うそ鳥」の入った袋を「替えましょう、替えましょう」という掛け声とともに周囲の人と交換しあう身替り厄除けの神事です。また、2月から3月にかけての「梅まつり」は同じ藤井寺市内の葛井寺の「藤まつり」とならぶ花の祭りとして有名な他、3月25日の「河内の春ごと(菜種御供大祭)」、7月24、25日の「天神まつり」など、菅原道真ゆかりのものだけでも様々な祭りがあります。
駅からの参道
道明寺天満宮に車で参拝する場合、駐車場の場所が境内ということで拝殿まですぐに到達してしまいますが、道明寺駅からスタートすると商店街を抜けたり、古い参詣道を歩くことが出来ます。「天満宮」と彫られた石灯籠 |
道明寺駅の改札を出て少し南に行くと、「大坂夏の陣道明寺合戦記念碑」の向かい側に、「道明寺天神通り商店街」の入口があります。この商店街を抜けるのが天満宮への最短コースで、250mほどで神門の下に着きます。
しかし、商店街入口からさらに70mほど南に行くと「天満宮」と彫られた大きな一対の石灯籠があります。古い地図を見ると、現在商店街となっている道が無く、商店街の道を確認出来るのが第2次大戦の後なので、かつてはこの灯籠の間の道を西に進んで参拝していたと思われます。
蓮池の南にある道標 |
石灯籠のある道を西に250mほど進むと、少し広い道路に出ます。ここを右折するとすぐ目の前に道明寺天満宮の神門が見えますが、一旦天満宮と逆の左(南)に100m弱歩いて「左 天満宮」の石碑(道標)のある交差点で振り返ると、かつての土師神社や土師寺のあった時代の遺構と現在の天満宮を一度に見ることが出来ます。
蓮池の間を通る参道(奥に天満宮) |
天満宮の神門から真っすぐ南に伸びる参道の左右両側には蓮池がありますが、これは往時を偲ぶ数少ない遺構の一つです。
蓮池と説明板 |
絵図によると、かつてはこの池の北側に南大門があったようで、現在の神門は中門と呼ばれていたようです。
境内
改めて参道を天満宮に向けて進むと、広い石段と小高い丘の上に建つ神門が見えます。神門 |
この神門前の道を右に行くと道明寺天神通り商店街を抜けて道明寺駅に至り、左に行くと国道170号(旧道)に出ます。
石畳の参道 |
石段周辺のいくつかの石碑などを見つつ、神門をくぐると長い石畳の参道と、広い境内が目に入ります。
注連柱 |
まずは巨大な注連柱をくぐり奥に進みます。
天寿殿 |
参道の左側にある白壁の立派な建物は明治天皇行在所であり、総合結婚式場でもある天寿殿です。
多数の灯籠や歌碑・石碑 |
道明寺天満宮ほどの神社になると、境内に数多くの灯籠や石碑などが奉納されていているのでそれらを見るだけでも面白いです。当神社の公式ホームページの境内マップには灯篭の場所や年代も記載されています。
石造りの鳥居 |
神門から100mほどで石造りの鳥居が見えてきます。
手水舎への道 |
鳥居の手前、左手に手水舎への道があるのでまずはそちらに。この辺りにも梅の木がたくさんあります。
手水舎 |
手水舎もなかなか歴史を感じさせる建物です。
道頓堀や戎橋の文字も |
手水舎外側の石にも様々な文字が彫られていますが、道明寺周辺以外の地名もすぐに見つけることが出来ます。
鳥居の額 |
再び参道に戻り鳥居をくぐります。
左側の神牛舎 |
鳥居をくぐると左右に天満宮ではお馴染みの、天神様のお使いである牛の像があります。
撫で牛 |
特に右手には多くの神牛舎が並んでおり、最も手前には「撫で牛」があります。これは青銅の神牛で、自分の体の悪いところを撫でると良くなるといわれています。
さざれ石 |
撫で牛の少し先には神社や「君が代」でお馴染みの「さざれ石」があります。
拝殿 |
そして広場の先には拝殿が見えます。こちらの本殿、幣殿、拝殿はほぼ南向きとなっています。
歴史ある拝殿・幣殿・本殿 |
立派な檜皮葺の屋根が特徴的な社殿ですが、本殿・幣殿・拝殿ともに延享2年(1745年)の建築のようです。
能楽堂 |
拝殿で参拝し、左後ろを振り返ると能楽殿が見えます。
こちらでも様々なイベントが |
こちらの能楽殿は文化12年(1815年)の建築で、大阪府内では最古の能楽殿です。
授与所 |
能楽殿の向かい、拝殿に向かって左手に授与所があります。
絵馬堂 |
また、拝殿向かって右手には絵馬堂がありますが、こちらは時期によって休憩所となっているようでした。
土師社 |
現在の道明寺天満宮には多数の境内社がありますが、その中でも参拝しておきたいのが元宮である土師社です。前述のように、天暦元年(947年)に道真を祀る天満宮が創建されまではこちらの土師神社が本社でした。
土師社本殿 |
御祭神は天夷鳥命(あめのひなどりのみこと)、野見宿祢、大国主命で、土師社は現在でも道明寺地区に暮らす人々の氏神となっています。
神門外の見どころ
道明寺天満宮には、神門の外側にも見どころがあります。夏水の井と登り窯 |
神門前の道を東(商店街や駅の方向)に少し行くと、斜面にいくつかの石碑などがあります。
夏水の井 |
「夏水の井(げすいのい)」は菅原道真が40歳の時、ひと夏この地に逗留しこの井戸の水で五部の大乗経を書写したと伝えられています。その経塚から生えた木を「もくげんじゅ」と呼び、ここから100mほど南西にある西宮で見ることが出来ます。
登り窯(復元) |
また、夏水の井の隣には復元された登り窯があります。これは実際に登り窯がこの付近にあったことから、土師氏に関わりの深い埴輪製作過程の一部を再現するために復元されました。
登り窯内の復元埴輪 |
この他にも、道明寺天満宮には多数の境内社や約80種800本の梅の木が植えられた梅園などがありますが、今回紹介しきれなかった分は後日紹介したいと思います。
●道明寺天満宮 ホームページ →http://www.domyojitenmangu.com/index.html
●道明寺天満宮 Facebook →https://ja-jp.facebook.com/tenmangu/
アクセス
近鉄南大阪線・道明寺線「道明寺」駅から道明寺天神通り商店街を通って西に約250mで右手に神門があります。駐車場入口 |
車で行く場合は、国道170号(旧道)の「道明寺」交差点を東に。300mほど進むと左手に天満宮境内にある駐車場への入口があります。駐車無料ですが、利用可能時間は各施設の受付時間に準じると思われます。各祭事の時などは混雑が予想されますが、正月3ヶ日は付近に臨時駐車場が開設されます。
●詳しくは 道明寺天満宮 交通のページ →http://www.domyojitenmangu.com/access.html
なお、北の近鉄線の線路を越えると、允恭天皇陵をはじめ、国府八幡神社、志貴県主神社、伴林氏神社など古墳や神社が多数があります。
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