碓井八坂神社
2020年5月訪問
碓井八坂神社(うすいやさかじんじゃ)は大阪府羽曳野市碓井にある神社です。神社の境内にはひと際高い木があり、周りには広場や児童公園、防災倉庫が設置されていることから、昔ながらの街並みも残る住宅地の中にあって、人々が集まる中心的な場所だったという雰囲気を感じられます。
碓井八坂神社(羽曳野市) |
鎮座地周辺は近鉄線の古市駅からも近い住宅地で、今は「古市」という一つの町のようになっていますが、もともとは北の誉田と南の古市の間にある碓井集落で、当社はその氏神だったようです。
歴史と概要
碓井八坂神社の正確な創建年は不詳です。現地には説明板が設置されており、それによると平安時代中期に編纂された「延喜式神名帳」に当社の名が記載されていないことから、創建はそれ以降、つまり10世紀前期以降と考えられているようです。
説明板には由来として、奈良時代の僧である行基上人が創建した「井徳院」の鎮守であったという説と、古市神社からの分社である説が記載されています。
井徳院は当社から50mほど東の一帯にあった寺院で、その境内の碓型井戸からは良質の清水が湧出し、その水は万病によく効くとの評判で遠方からの参詣者も多かったと伝えられています。しかし、後に南北朝の争乱で兵火を受けて焼失し、廃寺となったそうです。
説明板 |
御祭神は素戔嗚命となっています。説明板には素戔嗚命が渡来系の神であるかのように記述されていますが、これは、古代の渡来系氏族で王仁(わに)の子孫とされる西文氏(かわちのふみうじ)が古市を本拠地としていたから、または渡来系氏族が創始した神社が素戔嗚命を祀っていることが多い、あるいは明治政府により出された神仏判然令(神仏分離令)まで素戔嗚命が、釈迦の生誕地に因む祇園精舎の守護神とされた「牛頭天王(ごずてんのう)」と同一視されていたこと、ということでしょうか。ちなみに、牛頭天王は日本における神仏習合の神で、中国などの文献には見られないそうです。
鎮座地周辺は、明治時代のはじめまでは河内国古市郡碓井村でした。その後様々な変遷を経て明治22年(1889年)に誉田村、軽墓村とともに古市村に編入、明治時代の終わりごろの鎮座地は南河内郡古市町大字碓井字新屋敷となっています。その後、誉田神社(誉田八幡宮)に合祀されたようですが、現在の碓井八坂神社境内にある「御遷宮」の記念碑から昭和26年(1951年)に現社地に遷宮(復社?)したようです。
なお、碓井という地名は古代にあった「清泉碓井(せいせんうすい)」の井戸から起こっているそうです(前述の井徳院の井戸のことと思われます)。また、大阪で2月から5月頃にかけて出回る野菜(豆)「ウスイエンドウ」のウスイは最初に栽培がはじめられた当地の名に由来します。
●ウスイエンドウにつてはこちら →【南河内豆知識】うすいえんどう(碓井豌豆) ・大阪でメジャーな春の旬野菜
碓井八坂神社は神職不在神社です。
境内
碓井八坂神社は旧碓井村集落の北東端だった場所に鎮座しており、社殿や鳥居などは西向きとなっています。神社の境内は東西約18m、南北約12mで玉垣や塀で囲われており、その周囲、特に北側は公園のように整備されています。
鳥居 |
鳥居の前、神社西側の道路は舗装された広場のようになっており、南側の「碓井町防災倉庫」と北側の建物の間から公園、神社へと入ります。
参道の先の神門 |
鳥居をくぐると、参道の脇に歴史のありそうな狛犬や石燈籠があり、その先の石段の上に神門が見えます。
手水鉢 |
参道左手にある手水鉢も年代物のようです。
参道左手の狛犬と燈籠 |
神門手前の左手には狛犬と2基の石燈籠があります。
狛犬の「天王 古舗中」の銘 |
狛犬の台座には「天王」とあることから、牛頭天王(素戔嗚命)を祀る神社であることがわかります。
参道右手の説明板など |
一方、参道右手の神門手前には狛犬と説明板、そしてその右側に石碑があります。
「御遷宮」の石碑 |
説明板の隣の石碑には「御遷宮 昭和二十六年十月八日」と彫られていることから、第二次大戦後にこちらに遷座されたことが窺えます。
神門 |
社殿は一段高くなった場所に建てられており、周りは神門を除いて塀で囲われています。
「神光照海」の扁額 |
拝殿手前で参拝すると、拝殿の奥、本殿の手前に「神光照海」と書かれた扁額が架かっているのが見えます。素戔嗚命の統治領域は文献によって異なっており、三貴神のうち素戔嗚命には夜の食国または海原を治めるように言われた、とするものもあります。
本殿は扁額のさらに奥、覆屋の中に鎮座しています。
神社の裏側(東側) |
神社の裏側(東側)にまわると、社殿の形などがよくわかります。また、かなり大きな切り株が並んでいることから、数年前まではこの一角がまさに鎮守の杜と呼ぶにふさわしい場所だったと思われます。
アクセス
近鉄南大阪線・長野線「古市」駅からは主に2つのコースがあります。
1つ目は、駅から西に進み国道170号(旧道)に出ます。「白鳥」交差点からは約500m、「白鳥北」からは約350m北(北東)に進み、東高野街道と交わる信号のある交差点を右折します。東高野街道を南に進み、踏み切りの手前を左折。踏切を越えて勝光寺の横を抜け、40mほど先を左に入り、すぐに道なりに右に曲がります。あとは100mほど進むと正面に碓井八坂神社が見えます。
神社北側の碓井ちびっこ広場 |
2つ目のコースは、駅から国道166号(竹内街道)を観光案内所などのある東に進み、約270m先の交差点を左折し東高野街道に入ります。約500m先(途中クランク状に曲がっています)の踏切を渡ってすぐに右折し、踏切を越え勝光寺の横を通り40mほど先を左折。すぐ道なりに右に曲がり100mほど進むと碓井八坂神社が見えます。
なお、神社への道には狭い箇所も多く、駐車場も無いようです。
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