富栄戎神社
2017年9月訪問(2022年4月更新)
富栄戎神社(とみさかえびすじんじゃ)は大阪府富田林市富田林町にある神社です。旧杉山家住宅をはじめとした江戸時代からの古き良き街並みを残し、大阪府内で唯一国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、近年南河内でも有数の人気観光スポットになりつつある寺内町(じないまち)の東の端に鎮座しています。富栄戎神社(富田林市) |
戎(恵比須、恵比寿)神社といえば、大阪はもちろん、関西ではお馴染みの商売の神様「えべっさん」ということで、富栄戎は小さな神社ながら毎年1月のお祭りには多くの参拝客で賑わいます。
歴史と概要
富栄戎神社の正確な創建年と御祭神は不詳ですが、富田林市のホームページや郷土史の資料などによると、地元の恵比寿講によって祀られたていたようです。
江戸時代から明治の初めにかけての富田林寺内町では酒造りが盛んで、酒屋の同業者による組合もありました。その組合は「エビス講」と呼ばれ、この「エビス講」により祀られた当戎神社は「堺丁の戎神」として近在の人々の信仰を集めていました。ちなみに、この堺丁は堺町や堺筋と呼ばれた東西の通りの名称です。
今では全て廃業していますが、かつて寺内町には10の造り酒屋があり、「富田林の酒屋の井戸は底に黄金の水がわく」ともいわれていたそうです。河内の酒造業の中心的組織であった恵比寿講が商売繁盛を願って祀ったのが戎神社でした。江戸時代には、このような恵比寿講による恵比寿神社や金刀比羅講による金刀比羅神社など、村の鎮守の神社だけでなく講によって勧請された神社が各地に建てられました。
なお、河内名所図会などによると寺内町周辺ではかつて葡萄も栽培されており、日本酒だけではなく葡萄酒も造られていたそうです。
当戎神社はかつて寺内町内の堺町(堺筋)東端に鎮座していましたが、明治5年(1872年)に神武天皇遙拝所となり、明治23年(1890年)に新道をつける際に今の場所に移されたようです。この頃から御神体はながらく当時の喜志村(現富田林市の北部)にある美具久留御魂神社に預けられていましたが、第二次大戦後に「富栄戎講」が組織され、御神体をお迎えして盛大に祀られるようになりました。
なお、現在は「富栄戎神社えびす講」が発足して運営にあたり、富栄戎神社の社殿は平成28年(2016年)に改修されて、新しく綺麗な社殿となりました。
現在の様子
現在、当社は富田林寺内町東端の入口にあたる山中田坂(やまちゅうだざか)に沿った石垣の上に鎮座しています。寺内町は石川西岸(左岸)の河岸段丘の上に造られ、かつては周囲を土塁や竹林で囲み、四箇所の門を設けて朝夕に開閉していたそうです。
山中田坂の上から見た石川方面(左が神社) |
そんな寺内町から石川をはじめ、対岸の川向や山中田、千早街道に向かう道がこの山中田坂でした。山中田坂は、寺内町の東の端にある石川と寺内町を結ぶ急な坂道で、明治時代になって新しく道が出来るまでは、石川の東岸(右岸)と寺内町を結ぶ唯一の道として賑わいました。
祭礼
戎神社での祭礼はなんと言っても年の初めの「えべっさん」です。富栄戎でも福娘さんがいておみくじや絵馬、お札の販売がある他、運試しの大福引や町総代会による吉兆の販売、関東煮や飲み物の販売もあり毎年多くの参拝客で賑わいます。えべっさん(2018年1月) |
社殿側面より(2018年1月) |
本殿裏の銅鑼太鼓(2018年1月) |
「耳が遠い」とされるえべっさんにお願いするために、本殿裏に回って銅鑼太鼓をたたきます(2回まで)。このように本殿裏で何かをたたいてえべっさんにお願いする神社として南河内地域では大阪狭山市今熊の三都神社境内にある三都戎神社などがあります。
祭礼の後(神社改修前) |
富栄戎神社のえびす祭のおおよその日程は、宵戎が1月9日9時~20時、十日戎が1月10日9時~20時、残戎が1月11日9時~12時となっています。
えびす講による案内 |
富栄戎神社は神職不在神社ですが、今も美具久留御魂神社と深いつながりがあるようです。
アクセス
府道33号線(旧国道309号線)の金剛大橋西詰の交差点から西に約180m進んだ先の左手、じないまち展望広場から山中田坂を挟んですぐ北側にあります。公共交通機関では近鉄長野線「富田林」駅南口のロータリー向かいにある「観光施設きらめきファクトリー」横から寺内町に向け直進し、約400m先の(上にミラーが付いている)交差点を左折して東高野街道に入ります。そこから300mほど進み、もんくま竹林商店さんの角を右に曲がるとすぐに富栄戎神社があります。
千早赤阪村、河南町方面からは府道33号線の金剛大橋を渡った先の交差点(金剛大橋西詰)を左斜め前方に入ると神社へ向かいます
いずれの場合も寺内町内は道が細いので注意が必要です。また、コインパーキングは寺内町内以外に駅前にも数ヶ所あります。
1月の「えべっさん」の時期などは、金剛大橋西詰の東側河川敷の駐車場が神社の臨時駐車場になりますが、普段は閉鎖されているようです。
※令和2年(2020年)以降、新型コロナウイルス感染症対策の一環で河川敷駐車場が閉鎖されている可能性があります。
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